はじめまして。6月からNEXTEPで学生講師として働き始めました、所司翼と申します。今日は大学の授業の一環で利用した電子顕微鏡についてお話したいと思います。
小中高生の皆さんも学校で顕微鏡には触れたことがありますよね。それは光学顕微鏡と呼ばれるもので、大体数十倍から数百倍の倍率に拡大して試料を観察できます。その原理には光とレンズで物体を拡大するという虫眼鏡と同じものが使われています。しかしながら、光学顕微鏡を通して見える最も小さいもののサイズ(分解能と言います)には限界があります。すなわち、可視光の波長(400~700nm)よりも小さい物体を見ることは不可能です。
図1 光学顕微鏡
そのため、光学顕微鏡より分解能が細かい顕微鏡を作るために研究が行われてきました。そこで誕生したのが電子顕微鏡です。電子顕微鏡では、光より波長が短い電子線を調べたい試料に投射し、通り抜けたり反射したり飛び出てきたりする電子の量を検知して、画像にします。そうすることで、分解能はなんと約50pmまで改良でき、原子の一つ一つの粒まで見ることができるようになりました。ただ、電子顕微鏡には二つの難点があります。一つ目は、電子線を細かな磁界によって制御しているため、周囲の磁界が僅かでも変化すると観察される像が不明瞭になってしまうことです。僕が訪問した東大の弥生キャンパスにある電子顕微鏡の場合、すぐそばに磁場を搔き乱してしまう地下鉄が通っているため、電車が止まる夜間に研究を行っているとのことでした。二つ目は、電子線を発生させるために、数百数千キロボルトの超高電圧や、電子を加速させるのに十分長い真空管を用意する必要があることです。なんと二階建ての超大規模な電子顕微鏡が数十年前には開発されていました。
図2 電子顕微鏡
このような電子顕微鏡は、物質を構成する原子同士の位置関係を精密に測定できるため、半導体やバッテリーなどの新材料開発に役立たれています。そして、今なお世界中でより分解能が細かい顕微鏡を開発しようと競争が行われています。このコラムで顕微鏡に興味を持った方、ミクロな世界が大好きな方は、顕微鏡の世界に足を踏み入れてはいかがでしょうか。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。